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粟津 祐逸・詩2
あわづ ゆういつ    

祐逸Top 俳句 ・2 短歌2


    

 潟の鴨

   

もは、寒波くる潟へとんでいこうと思っていた。それは午睡のようにやさしいことだ。
ひとしきり、水にくぐった かもは、ある夜、こっそり枯蘆のほとりへやってきた。そこには胃袋をみたす小さいさかなもなく、ただはげしい吹雪の音が貝独楽の鳴りをたてていた。

潟は銀ねずによどんでいた。いや、それは、はげしく咆哮していたのだ。
しかもそれは、絶えずしぶきをあげていた。それでも、かもは、しける波しぶきをよそに地上に落下する隕石そのまま翔けていったのだ。

かもは、へんに小さい潟のさかなや、潟のはげしい時化をも忘れ、いつしか斜に張りついた潟の凍りを憂えていた。潟のなかへ、身をすててしまおうと思った かもも、妙にそらぞらしい空腹と恐怖に脅えていた。

かもは一瞬、とまどうてしまった。もう、かもの羽根は、霜降りのように、きれいにつやがでている。ずっと遠い潟の沖合には、ぽっかりあかりが見えている。でも、かもは、なおも厚い氷のうえを翔けつづけていくのだ。——もうひろい潟や空はまっしろに塗りつぶされて、石庭のようにしずまりかえっていた。

  

  


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