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粟津 祐逸・詩1
あわづ ゆういつ    

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Photo by Yaeko

    

 潟は死滅するのか

   

おれは死滅するのか
首が縊れる
こうかれは呟いた
ざんばら髪をふりみだして呪いつづける潟だ

漫々とみなぎるみず
潟は地霊のハンモック
幾艘も舟はゆれる
橋桁は空にたかく吊りあげられ
あおい鉄骨がゆらぐ
サンド・ポンプのふきあげる陰湿などろ
錯乱したスペクタルは
はじめて顫える蘆をみた
灰白色の霧のたちこめる潟に
くらやみを衝いてでてくる淡水魚
突如 平べたいふねが突進する
鋭角的な漁法をうけついできた漁師は舷を打つ

ダブった一枚のネガフィルを突き破れ!
動物的な心臓
この潟にメスを刺したのか
緞帳のようにゆれる山脈
空にしろい地図がひろがり
鴉はひとつの球体となって翔けてくる
かさかさ枯芦のそよぐ底冷えの潟に
魚の骨体は沈もうとするーー暗い底へ底へと
もう沈むことのできない底へ
しかしこの空間にはわずかの気流もないのだ

唐突に潟のみずが干あがる
丘陵に橋をわたした
みぎわにわずかの藻の匂いがし
日ぐれにはもう囁くひともない

〈死〉をうつす潟にふねがうかぶ
ちかくでゆらぐ声は いくじっぽん
いくども往き来の途絶えた魚道
翔けてゆく黒い水鳥
掌をひるがえして水道は二つに割れ
ふねが帆柱もふなべりをも
ばらばらに砕き
廃墟よりも荒れはてた
ひろい潟のなかにかれの身を沈めた

  

八郎潟・残存湖 Photo by Tetsueko
   


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